栃木県には、若手医師が
果敢にチャレンジできる
土壌がある

小倉 崇以

社会福祉法人 恩賜財団 済生会支部 栃木県済生会宇都宮病院/救急・集中治療科/栃木県救命救急センター センター長

栃木県には、若手医師が果敢にチャレンジできる土壌がある

信頼される救急医療を栃木県につくるために

医師を目指した理由は祖父の遺言でした。祖父は栃木県庁の行政官として、無医村を無くすために自治医科大学の開設に奔走した人物でした。

そんな祖父から、「医者になる気はないのか?」と高校2年生の冬に聞かれ、そのとき僕は医師になることを考えてはいなかったので、「ない」と返事をしました。その数時間後に、祖父は心臓発作により突然亡くなってしまったのです。
 祖父からの問いかけは僕への遺言となり、医師になろうと強く誓いましたし、同時期に高校の先輩が亡くなったこともあり救急医を目指そうと思いました。

栃木県の医療を支えるために祖父が頑張ってきた話を聞いていたので、私も栃木県の医療に貢献するつもりでいました。そのためには、まず、栃木県にはどんな問題や課題があり、どんな医療が求められているのかを知る必要があると思い、大学卒業後は地元の栃木県に戻り「済生会宇都宮病院」で初期研修を行いました。

後期研修は栃木県を離れ、群馬県の「前橋赤十字病院」の集中治療科・救急科で研鑽を積むことにしました。地域密着型の救命救急センターがあり、ドクターヘリやドクターカーの運用、ICUで人工呼吸、人工心肺、ECMOの診療ができるなど、救急と集中治療が一つの施設で研鑽できる、当時唯一の病院だったからです。

指導を仰いだ中野 実先生(現・前橋赤十字病院 院長)は、「済生会宇都宮病院」で救急医療を勉強した先生でした。中野先生には救急隊や行政との連携など、地域に密着した救急を教えてもらいました。患者さんを診るたびに地域から信頼されている病院であることを実感しましたし、栃木県にも信頼される救命救急センターをつくりたいと強く思いました。
 その後、ECMOを勉強するため英国ケンブリッジ大学に留学しました。2009年のインフルエンザパンデミックの際に日本の感染症対策に強い危機感を抱きましたし、今後はECMOが必要になると確信があったからです。

栃木県の医療の魅力は”自分たちで魅力を生み出せる“こと

2018年に「済生会宇都宮病院」に戻って自分に課したのは、地域住民から信頼され、安心した暮らしを実現する医療インフラとして盤石の救命救急センターをつくることでした。

救急医がトリアージをして、治療は各専門科が行うER型救急は、超高齢化社会で複数疾患を持つ患者さんが多い時代にマッチしているとは言えず、救急医も患者の入院診療に至るまで幅広く携わる必要があると考え、次の2つをミッションとして取り組んでいます。

ひとつめは、救急車の受入れからICUでの重症者の治療、更にはその後のリハビリテーションまで、患者さんを自分たちで責任をもって診ることができる新しい救命救急センターを構築すること。

もうひとつは、高い管理技術が求められるECMO治療を専門的に行うECMOセンターを立ち上げ、日本の救急医療の新たなモデルケースを造り上げること。

救命救急センターもECMOセンターも未だ走り出しの段階ではありますが、いろいろな方々の温かいサポートや人との縁があって、今、順調に運営できていると感じています。

栃木県は医療資源が少ないため、各医療機関の横のつながりが強く、協力体制にあることが特徴だと感じていますが、栃木県の医療の魅力は、これから若い医師のみなさんがつくりあげていくものだと思っています。

私は救急医として、住民のみなさんが安心して暮らすことができる地域づくりのために新しい救命救急医療の構築に挑戦していますが、さらに人材育成にも力を入れたいと考えています。地域づくりには人づくりが大切であり、行政と連携しながら医師一人ひとりの能力と個性を最大限に発揮できる環境づくりや、栃木県として医師の海外留学を後押しするようなシステムなど、世界に羽ばたくことができるような人材育成の土壌もつくっていきたいですね。

栃木県には、若くしてチャレンジできる環境があり、それを受け入れてくれる懐の深さもあります。これから栃木県の医療をみんなと一緒につくっていく。それができる環境にあることが栃木県の最大の魅力ではないでしょうか。

どういう医者として終わりたいのか“を具体的に描くことが大切

自分のビジョンを実現させるためには、「どんな医者になろうか」ではなく”どういう医者として終わりたいのか、“を具体的に描くことが大切です。

「なんとなく専門医資格を取った」、「大学の医局人事だから仕方がない」という考えやキャリアでは、自分のビジョンを語ることはできても、実現することは難しいでしょう。30年後、自分の子どもに医師としての半生を語る姿を想像して、具体的に語ることができるまで将来像をしっかり描いてください。それを実現するためにはどういうキャリアを歩むべきなのか、進むべき道が見つかるはずです。

そして、世の中にとって良いと思ったことを、医療を通して実現したいという強い決意があるのなら、ぜひ栃木県に来てください。あなたのビジョンを実現するためにチャレンジできる環境が栃木県にはあります。共に栃木県の医療の魅力をつくっていきましょう。

小倉崇以先生のオフ

温泉が好きで、オフには妻・子ども2人とよく温泉に行っています。温泉地も近く、気軽に行けるのがいいですよね。 栃木県は那須温泉や鬼怒川温泉など数多くの温泉が集まっている日本有数の温泉地であり、都心から日帰りでいくこともできます。医師にとって日頃の疲れを癒すことも大切な仕事。自分にとって温泉が身近にあることは、栃木県で医師をするもう一つの大きな魅力だと思っています。