日本赤十字社 足利赤十字病院 院長 室久 俊光 先生 |
獨協医科大学 日光医療センター 病院長 安 隆則 先生 |
上都賀厚生農業協同組合連合会 上都賀総合病院 病院長 安藤 克彦 先生 |
これからは“総合力“の時代。
栃木県で、人々から信頼され、必要とされる真に実力のある医師に!
栃木県の地域医療を支える3病院の特徴と“強み”
安藤病院長…鹿沼市に位置する上都賀総合病院(352床)は、鹿沼市全域、宇都宮市西部、日光市広域など、県西保健医療圏の中核病院として、人口約15万人を支えている二次救急病院です。
へき地医療拠点病院、地域がん診療病院、脳卒中拠点医療機関、災害拠点病院、DMAT指定病院であり、さらに県指定の「認知症疾患医療センター」を開設するとともに、PFM(外来から患者の入退院を支援する仕組み)を地域中核病院規模としては全国的にも先駆けて導入していることが特徴です。
安病院長…日光医療センター(199床)は、国内外多くの人々が訪れる国際観光都市日光の基幹病院として地域の急性期医療を支えており、さらにはリハビリテーション分野にも力を注ぎ、切れ目のない医療サービスを展開しています。また、地域医療支援病院や災害拠点病院としての役割も担っている病院です。
獨協医科大学創立50周年記念の節目の年である2023年1月に日光市森友に新築移転したことを契機に、「眼科」「救急・総合診療科」を新設し、全21科の診療体制を整えるとともに、HCU(高度治療室)や重症病床も導入しました。さらにはIT技術を用いて高品質な医療を提供するスマート・ホスピタルを実現しています。
室久院長…足利赤十字病院(540床)は急性期中核病院として、群馬県を含む両毛保健医療圏6市5町75万人を支える急性期中核病院です。2011年に渡良瀬川緑地に新築移転し、「一般病棟全室個室」の9階建て病棟を整備しました。COVID-19 における全室個室での療養は感染拡大の防止となり、“感染症に強い病院”としても認知されています。
ロボット手術ダヴィンチやハイブリッド手術室を備えるなど先端医療にも力を入れており、また、災害拠点病院として災害派遣や日赤独自の救護班を3個班編成していること、さらに国際病院機能評価であるJCI認証やJMIP(外国人患者受入れ医療機関認証制度)、ISO15189 認証など、国際基準の安全・良質な医療を担保していること、エイズ診療拠点病院として総合的なエイズ診療を提供していることも当院の特徴です。
安藤病院長…上都賀総合病院の強みは、栃木県に3箇所しかない精神科の閉鎖病棟を有した総合病院であることや、地域唯一の急性期の基幹病院として、周辺地域の救急医療を一手に担っていることです。鹿沼市における救急車の出動件数のうち5割近くを受け入れており、2022年には2,000件を超える受け入れをしました。近隣の宇都宮市で受け入れ困難だった患者さんも当院に搬送されてきます。一次から二次までが守備範囲ですが、場合によっては三次救急まで受け入れています。
室久院長…足利赤十字病院の強みは、がん診療と救急です。当院は地域がん診療連携拠点病院であり、最先端放射線治療装置のサイバーナイフを導入するなど、高度ながん治療を提供しています。救命救急センターでは急性期中核病院として24時間体制で高度医療を提供しており、2022年度には5,500台の救急車を受け入れました。
安病院長…日光医療センターでも救急医療に注力しています。私が院長に就任してから職員たちに一貫して伝えていることは、“救急車を断らない病院”として県民、周辺医療機関、そして行政からも頼りにされる病院になること。救急車や近隣医療機関からの要請に対して95%以上の急患受け入れ維持と、年間2,000件の受け入れをめざしています。2022年度は1,651件でしたが今年度は2,000件近くまで行くと思います。
“総合力”の習得に最適な救急医療に強い環境
室久院長…3病院ともに救急に力を入れていますが、こうした環境は若手医師の研鑽の場として非常に魅力的だと思います。
安藤病院長…多彩な症例を経験できる救急は、医師としての基礎力を養うための最良の場です。
安病院長…若い先生方には、“救急車を断らない医師”に育ってほしいと思っています。救急車を断らないためには、複数疾患を総合的に診ることができる人材育成が重要なので、当院では2023年に新たに「救急・総合診療科」を開設しました。また、研修医や専攻医の先生方が安心して救急医療に臨むことができるよう、各診療科の上級医にいつでも相談ができるバックアップ体制をしっかり整えています。
室久院長…バックアップ体制がしっかりしていると積極的に救急に臨むことができますし、重大な疾患を見逃さないためにも指導医や上級医の手厚いフォローアップは非常に重要です。
安病院長…そうですね。当院では毎朝のカンファレンスで、前日入ってきた救急車の事例を一件一件確認し、帰宅させた患者さんに重症疾患の見逃しがないかなど、しっかり検討しています。
室久院長…研修医や臓器別専攻医の先生方にとって、多彩な患者さんに対応しなければならない救急当直は不安も大きいと思います。しかし、数を経験するうちに対応できるようになりますし、医師としての大きな自信にもつながっていきます。足利赤十字病院の研修医たちも救命救急センターでの当直経験によって初期研修が修了する頃には「救急が全然怖くなくなった」と、頼もしい医師に成長しています。
安藤病院長…それと、高い専門性をもった医師をめざすことは非常によいことですが、専門分野しか診られないというのも困ります。“総合力”がある上で、高い専門性をもった医師になってほしいですね。将来、専門分野において優れた医師をめざすのなら、幅広い基礎力を修得しておくことが非常に大切だと思います。
安病院長…ものすごく大事なことですよね。(臨床能力を家屋に例えれば)1階部分の“総合力”があるからこそ、2階部分の内科系、外科系、そして専門分野である循環器や消化器といった3階に進むことができるんです。1階と2階部分がしっかりしていなければ3階に上がることはできません。日光医療センターではそうした教育体制を敷いています。
安藤病院長…幅広い診療の知識や技術の裏付けがあってこそ、専門分野において力を最大限に発揮できると思います。そういう意味でも、救急医療に強い環境で研鑽を積むことは、将来、どの診療科に進むにしても非常に大きな力となるはずです。
今後、ますます重要となる“ノンテクニカルスキル”の習得
安藤病院長…病気だけ治ればいいというのは医師として半人前。患者さんには退院した後の生活があります。若い先生方には“人”を診ることができる医師になってほしいと思います。“人”を診る医師とは、患者さんごとに異なる家族構成や生活、社会背景、退院後の生活まで見据え、一人ひとりに最適な医療を提供することができる医師です。
室久院長…“人”を診るには、患者さんやご家族にきちんと向き合うことが大切であり、コミュニケーションスキルも医療の基本と言っていいほど必要不可欠なスキルでしょう。
安病院長…そうですね。患者さんの生活を知るにはご家族からの情報収集も欠かせません。栃木県の患者さんは高齢者の方が多く、高齢者に配慮した言葉遣いも重要となります。
安藤病院長…高齢者には人生の大先輩として敬う気持ちをもって接することが大切です。言葉遣い一つにしても、“親しみをもつ”と“馴れ馴れしい”のは違います。自分が親しみをもって発言した言葉でも、相手にとっては馴れ馴れしい言葉にもなりうる。「親しき仲にも礼儀あり」を常に心がけてほしいと思います。
安病院長…高齢患者さんの多い栃木県だからこそ、そうしたコミュニケーションスキルも醸成できるのではと思います。現代社会は核家族化が進行し、隣近所との交流もほとんどなく、高齢者の方を敬う環境で育ってきた人は少なくなっています。今後、都会でも少子高齢化はどんどん進んでいきますし、患者さんも高齢者が増えていくことは間違いありません。高齢者に対する接し方も、これからの日本の医療を支える若い医師たちが学ぶべき、大切なスキルでしょう。
安藤病院長…そして、「あいさつをする」「時間を守る」ことは社会人としての基本。これも信頼される医師になるために最低限必要なことです。
室久院長…医師は患者さんやご家族のプライバシーにも踏み込むため倫理観も必要ですし、社会性も非常に大切です。社会性が欠落していては、患者さんの立場に立った医療を提供できませんからね。
安藤病院長…知識や手術手技といったテクニカルスキルだけではなく、チーム医療に不可欠な協調性だったり、患者さんやそのご家族との友好な関係づくりだったり、そういった“ノンテクニカルスキル”も質の高い医療の提供に必要不可欠なスキルなのです。
室久院長…いくら豊富な知識や優れた技術があっても、ノンテクニカルスキルがなければ人々から信頼され、必要とされる医師にはなれません。ノンテクニカルスキルはどの科に進んでも、どの場所で働こうとも必要とされるものです。
安病院長…それと、医師は勉強をしなくなった時点で終わり。常日頃から新しい情報を入手し、勉強し続けることも重要です。日光医療センターでは、On duty, off duty(勤務時間中と時間外の研究会・学会への参加など)での学習指導要領をはっきりさせ、“勉強を継続できる医師”を育てています。特に若い先生方には学会発表を継続的に行うよう勧めています。アウトプットするためにはその10倍を調べる必要があり、かなりの勉強になります。
室久院長…教えてもらえるのを待つのではなく、自分から「やらせてください」とアクティブに動くことで、成長度合いも違ってきます。積極性のある先生は成長のスピードも速く、ものすごく大きく伸びますよね。どのように初期研修や専門研修に取り組むかが、その後の医師人生を大きく左右します。若い先生方には主体性をもって積極的に知識や技術を吸収していってほしいですね。
栃木県の内科専門研修で確かな“総合力”を獲得
安藤病院長…上都賀総合病院は内科専門研修の基幹施設です。コモンディジーズや高齢者に多い複数疾患を抱えた症例も多数経験できますし、糖尿病やリウマチ・膠原病など県下有数の専門性を持った医師たちが在籍しているため、領域によっては希少疾患も経験できます。
研修期間は基幹施設である当院で2年、連携施設で1年の3年間です。連携施設は、済生会宇都宮病院、栃木県立がんセンター、NHO栃木医療センター、昭和大学病院、昭和大学藤が丘病院、昭和大学江東豊洲病院、昭和大学横浜市北部病院となっています。
安病院長…日光医療センターも内科専門研修の基幹施設であり、月3〜4回の当直と月150〜170件の救急車に対応しながら“総合力”を習得していきます。診断・治療に迷いがあれば各診療科の医師にコンサルトでき、また翌朝のカンファレンスで前日の救急受け入れ症例の振り返りなど、フォローアップ体制も万全です。
研修期間は3年間で、当院での2年と、獨協医科大学病院、獨協医科大学埼玉医療センター、昭和大学病院、昭和大学藤が丘病院、昭和大学横浜市北部病院、昭和大学江東豊洲病院、那須赤十字病院、国立病院機構栃木医療センターの連携施設にて1年の研修を行います。
室久院長…足利赤十字病院も内科専門研修の基幹施設であり、臓器別の専門性に偏ることなく全人的な内科診療を修得できる研修を行っています。3年間のプログラムの1、2年目に当院で研修を行い、3年目は獨協医科大学病院、長崎病院、さいたま市立病院、獨協医科大学埼玉医療センター、慶應義塾大学病院、杏林大学医学部付属病院といった連携施設で研修を行うなど、当院でも専攻医の希望をもとに各連携施設の強みを活かした研修ができます。
安病院長…日光医療センターでは、自分が救急で診た患者さんはそのまま主治医として治療にあたる体制としています。たとえば救急対応した患者さんが脳卒中の場合、サブスぺで消化器内科をローテート中であっても、主治医として脳神経内科の先生の指導を仰ぎながら治療、入院と診ていきます。目指すサブスぺシャルティ領域を学びながら救急などを通して他の内科領域についても研鑽することで、“総合力”を同時に高めていくことができます。
安藤病院長…やはり内科医には正確な診断能力と幅広い初期対応能力が必要となりますが、こういったスキルを養うためには経験豊かな指導医のもとで、多数の未診断症例に接することが重要です。上都賀総合病院には、そのすべての条件が揃っています。
室久院長…足利赤十字病院は急性期病院ですが、一方で地域の病診・病病連携の中核でもあります。地域に根ざした病院であるため、コモンディジーズの経験はもちろん、超高齢社会における複数疾患を抱えた高齢患者さんの診療や、地域の病院との連携も豊富に経験することができます。
安病院長…日光医療センターでは、へき地拠点病院として毎週木曜日にへき地診療所での診療も行っています。それに同行して限界集落のへき地医療を経験することもできます。
安藤病院長…3病院ともに、地域医療を支える中核病院として、内科全般を包括的に診療している環境にあります。こうした環境で研鑽を積むことは、内科医としての大きなアドバンテージになるのでは ないでしょうか。
室久院長…そう思います。地域連携を実践できる“総合力”をもった内科医は、超高齢化が進展するこれからの日本の医療において非常に重要な存在となるでしょう。
安病院長… 日光市は栃木県のなかでも超高齢社会の一番先頭を走っている地域です。複数疾患を抱えている高齢患者さんは、内科、整形外科、眼科といったいろんな科を受診していくのですが、超高齢化社会では高齢患者さんの複数疾患を一人で総合的に診ることができる医師を育てる必要があります。栃木県はそうした医師が育つ相応しい環境にあると思います。
室久院長…そうですね。それと、足利赤十字病院の関連大学は10大学あり、医師たちの出身大学が多彩であることも特徴です。いろんな大学文化が交わる環境であり、それがお互いの刺激になっていますし、さまざまな文化や考え方を吸収出来る環境も若い先生方にとって魅力だと思います。
安藤病院長…上都賀総合病院では、診療科間や臓器別の縦割りがありません。こうした環境も“総合力”を養うための重要な要素だと思います。
安病院長…日光医療センターも199床の中規模病院ということもあり、部署間の垣根が低いため診療科横断的にフレキシブルな研鑽が可能です。また、当院にはサブスペシャルティである「老年病専門研修プログラム」もあり、私も含め老年科指導医が4名在籍しています。「老年病科」は骨粗鬆症や骨折、内科的疾患、救急医療など、いろんな知識を必要とする科であり、まさに総合医療なんです。
安藤病院長…3病院の特徴や強みからもわかるように、栃木県は高齢化社会が進展する日本の医療に必要な、“総合力”を備えた内科医になるための最良な教育環境にあると思います。
働き方の多様なニーズに応えキャリアの継続をバックアップ
安藤病院長…上都賀総合病院の常勤医は現在61名いますが、うち24名が女性医師です。当院では女性医師のキャリア支援体制も万全ですし、男性医師でも育休の取得や、時短勤務、当直ナシといった働き方をしている先生もいます。院内保育所も完備しているため、お子さんを預けて勤務されている先生も多いですね。
安病院長…日光医療センターでも、子育て中の先生がキャリアを継続していただけるよう、時短勤務、当直やオンコール免除などのサポート体制をしっかり整えています。院内保育所はありませんが、現在、近くの保育園施設との提携を進めているところです。
室久院長…足利赤十字病院でも当直免除や時短勤務が可能ですし、男性医師でも出産時育児休業を取得した先生や、子育てのために9時5時勤務の当直ナシで働いている先生もいます。
安藤病院長…ライフイベントや家庭の事情があっても、仕事を中断することなく、継続して働くことができる環境はキャリア形成にとても重要なことですよね。
安病院長…壬生の大学本部(獨協医科大学)には、日光医療センターの職員も利用できる「女性医師支援センター」があり、専任教員によるキャリア支援や研修中の出産・育児に対する相談支援を行っています。さらに、育児支援などに関するさまざまな情報発信、イブニングシッターサービス事業の実施など、安心してキャリアを継続できるサポートが充実しています。
安藤病院長…それに、上都賀総合病院ではオンとオフのメリハリをつけるために、時間外の会議やカンファレンスの撤廃、主治医制ではなく複数担当医制による業務分担などによって完全オフの時間がつくれるようにしています。「医師の働き方改革」が始まることもあり、地域の急性期病院だからといって休日が取れない、オフがないということはありません。
室久院長…そうですよね。栃木は研鑽の場としてもそうですが、“働きやすさ”という点においても優れた環境にあると思います。
素晴らしいキャリアと充実した医師人生は栃木県で実現する
安藤病院長…私が上都賀総合病院に赴任して約3年が経ちましたが、それ以前は30年以上、県外の病院で働いていました。栃木県に来て感じているのは、“住みやすさ”です。自然が豊かで美しく、川の水がとてもキレイなんですよね。常に心を癒してくれる環境も栃木県で働く魅力だと思います。
室久院長…それと栃木県と東京は思ったよりも遠くはなく、アクセスの利便性が良いことも魅力でしょう。足利市から東京の浅草までは電車で乗り換えなしの約1時間で行くことができます。
安藤病院長…宇都宮からは新幹線を利用すれば東京まで1時間以内で行けますし、隣の茨城県や群馬県へのアクセスも良いですよね。ちょっと足を延ばせば日光の世界遺産も愉しめます。
安病院長…日光は「日光東照宮」や「二宮尊徳記念館」といった歴史的、文化的遺産がありますし、温泉地としても全国的に有名です。手軽に温泉を愉しめる環境も魅力でしょう。
室久院長…足利も日本最古の学校といわれる日本遺産「史跡足利学校」や国宝「鑁阿寺」など、史跡や神社仏閣が数多く存在する歴史と文化のまちです。足利市には低山ハイキングコースがいくつかあって、個人的には美しい自然を満喫しながらハイキングを愉しめる環境が好きですね。栃木県は災害も少ないですし、とても住みやすい場所です。
安病院長…素晴らしいキャリアと医師人生を実現させるためには仕事の充実度も大切ですが、生活環境も重要な要素。そういう意味でも栃木県で医師としてキャリアを築いていくことは大きな魅力だと思います。
室久院長…そうですよね。それに、栃木の人たちは素朴で優しい人が多いのも特徴。患者さんは若手医師に協力的ですし、人間関係でギスギスするようなこともありません。初期研修や専門研修など、医師人生のスタート地点として、そして医師として大きく成長する場所として、とても最適な環境だと思います。
安藤病院長…栃木県のこれからの医療を支えていくためには、何といっても若い先生方の力が必要不可欠ですし、“総合力”のある医師がこれからの日本の医療には求められています。栃木県という環境なら、人々から求められ、活躍することができる、“総合力”をもった真に実力のある医師へと成長できるでしょう。