特集|各診療科と研修の魅力
とちぎメディカルセンターしもつが
救急科

渡邊 伸貴

とちぎメディカルセンターしもつが

どんな疾患にも対応できる救急医
進路は多様で活躍できる場も多く、地域貢献を実感できることも魅力

とちぎメディカルセンターしもつが 救急科
渡邊 伸貴( わたなべ・のぶたか)先生
出身地:栃木県宇都宮市
出身大学:北里大学医学部(2012年卒)
認定医・専門医:日本外科学会外科専門医、日本救急医学会救急科専門医
専門分野:救急、外傷外科、集中治療、Acute care Surgery

内科も外科も好きで、何でも診られる救急医に

大学卒業後は「自治医科大学附属病院」で初期研修を行い、3年目は自治医科大学の救急科に入局しました。入局後、まずは外科専門医を取得するため、2015年から「宇都宮記念病院」の消化器外科にて2年間研鑽を積ませていただきました。2017年に「自治医科大学附属病院」の救急科に戻り、救命救急センターでの診療や後進の育成に携わった後、派遣によって2024年4月から「とちぎメディカルセンターしもつが」(以降、TMCしもつが)の救急科に勤務しています。
「自治医科大学附属病院」を初期研修先に選んだ理由は、出身が栃木県であることや、全診療科の知識を満遍なく吸収したいと思い大学病院で探していたなか、自治医科大学は医師が全国から集まっており、学閥が一切ないフラットな環境であること、そして決め手となったのは病院見学をした際に感じた教育体制の手厚さと雰囲気の良さでした。
3年目は内科か、手術も好きだったので外科に進むか迷っていました。進路を考えているとき、ふと、6年間医学生として、また初期研修医として幅広く学んできたのに、3年目になって専門科以外を診ないのはもったいないことだと感じ、内科も外科も幅広く診に決めました。

「自治医科大学附属病院」の救急科は、救命救急センターを有する三次救急医療施設として栃木県の救急医療における最後の砦を担っており、年間2万人以上もの(うち救急車搬入は5000台)の救急患者を受け入れています。三次救急からコモンディジーズまで、多彩で豊富な症例を経験することができ、さらにドクターカーによるプレホスピタルケアの実践、災害医療(DMAT)のトレーニングなど、“攻めの救急医療”を学べることも特徴です。

他科との協力連携も抜群、症例数が多く教育体制も充実

現在勤務している「TMCしもつが」は、2013年4月に設立された人口約15万6千人の栃木市唯一の二次医療機関であり、年間3000件を超える救急搬送があります。ER型救急として、軽症から重症まですべての救急患者に対応しており、当院にて治療が難しい場合は、ドクターヘリによる専門医療機関への迅速な搬送にも対応しています。また、2013年設立ということで、広くて動きやすい救急室や医療機器・設備などハード面が充実していることも特徴です。
救急科では、私を含め救急科専門医である常勤医2名と、月・水・金は獨協医科大学から、火・木は自治医科大学から派遣される非常勤医師と協力しながら、救急搬送や紹介患者に対応しています。私が赴任する前は救急科専門医が不在であったため、救急車の応需率は5〜7割ほどでしたが、赴任した2024年4月以降は8割以上を受け入れており、本年度は4000件に届く見込みとなっています。さらに救急科として病棟管理も始めるなど充実した救急医療体制を整えているところです。
救急の受入れには他科との連携・協力も重要となりますが、その点、当院は他科の先生方が非常に協力的であり、入院治療をお願いするときも快く引き受けてくださいます。医局が全科一つの部屋で全員が“顔の見える”関係にあり、他科の先生同士がコミュニケーションを取っている光景が当たり前にある、非常に風通しの良い環境です。

「TMCしもつが」では、2017年7月に【自治医科大学地域臨床教育センター】が設置され、大学と連携した教育体制の充実が図られていることも特徴です。さらに、栃木市唯一の二次医療機関として豊富な症例が集まるため、初期研修ではプライマリ・ケアに必要な基本的診療技術を確実に修得することができます。
初期研修の要となる救急研修や当直では研修医がファーストタッチを行い、どのような検査や処置が必要なのか、研修医の先生方が自ら考える診療を大切にした研修、指導を行っています。当直(月3〜4回)は1年次の4月から始まり、研修医1名と内科系、外科系いずれかの2名による当直医の指導・フォローのもとで行うため、安心して臨むことができます。また、他科との連携が大切となる救急科は、端的かつ正確に伝えることができるコンサルト技術の習得に最適な場です。コンサルト技術はどの診療科に進んでも必要となる重要なスキルであるため、研修医が獲得すべき大切な能力の一つとして、コンサルト技術の獲得も重要視した指導を行っています。
さらに、救急科には獨協医科大学と自治医科大学から派遣医師が来ており、両大学の先生と交流ができることも魅力でしょう。

ワークライフバランスに優れ、活躍の場も幅広い救急医

救急科が忙しいのは昔のイメージであり、現在はメリハリを大切にしたワークライフバランスを重視している診療科です。私も「TMCしもつが」の救急科の責任者として、働きやすい環境づくりにも力を入れて取り組んでいます。日勤と夜勤の交代シフト制によって定時になれば当直医にバトンを渡して帰ることができますし、私自身も子どもの行事日には休ませてもらうなど、希望日に休みが取れる体制となっています。
救急科は一般外来とは異なり、緊急度が高く、これまでの生活が一変するような急病で運ばれてくる方がほとんどです。そうした患者さんに迅速な診断と処置を行い、他科の先生方と協力しながら最適な治療を提供し、無事に元気になって退院したときの達成感とやりがいは非常に大きなものがあります。複数の専門性を活かすことができる診療科ですし、幅広い知識を有しているため他科の先生から相談を受けることも多いなど、“医師からも頼られる医師”としてのやりがいも感じることができます。また、「TMCしもつが」の救急科では介護が必要な高齢者の方が搬送されることも多く、必要に応じて地域の多職種やクリニックの先生とも協力連携しながら社会調整を行うなど、地域全体と関わる医療ができることも特徴です。
今後の進路はまだ決めていませんが、救急医は全身を診ることができますし、地域の多職種と関わることもできるため在宅医療とも親和性が高く、ジェネラリストとして地域医療の現場で活躍をしたり、大学病院の三次救急にて重症度の高い患者さんを診たりと進路の選択肢が幅広いことも大きな魅力です。今後、どのような道に進むにしても、栃木県の医療に大きく貢献できる医師でありたいと思っています。

MESSAGE

救急科は考える力を養う最良の場、研修では“自分で考える癖”をつけてほしい

研修先を決める際は、必ず病院見学に行き、実際の目で教育体制や雰囲気を確かめることが重要です。人を基準に決めてしまうと、異動によってその先生がいなくなることもあるため、おすすめはしません。
そして研修では“自分で考える癖”をつけてください。特に救急研修は、鑑別診断や検査、治療方針を決めるなど、考える力を養う最良の機会です。常に自分で考える癖をつけることで、初期対応力や問題解決力など、医師として大切な実力を涵養することができます。「自治医科大学附属病院」は大学病院であっても地域医療を重視した医療を行っていますし、特に「TMCしもつが」に赴任してからは地域に密着した医療を強く感じるなど、医療を通して地域貢献を実感できることも特徴です。さらに栃木県は人が穏やかで、仕事のしやすさも魅力だと感じています。どこで研修をするか迷っている方は、ぜひ栃木県に来てください。

渡邊 伸貴先生のオフ

子どもが3人いるので、オフはもっぱら子どもの行事に参加するか、子どもたちと遊んで過ごしています。栃木県には室内施設、公園、遊園地、動物園、観光牧場など、子どもと遊べるスポットがたくさんあり、都会のように混雑していないことも魅力です。栃木県は自然が豊かで、車通りも少なく、子どもが安心してのびのびと遊べる環境にあるため、子育て中の医師にもおすすめです。

パンフレット「医心伝心トチギ医ズム2024 vol.2」で見る。